“漆黒の天幕にさえ背を向けて…”(後篇)
*やっぱり腐描写がいっぱいです。
そういうのが おイヤな方は全力で避けてください。
それはそれはやさしく丁寧に、抱きしめてくれる腕の頼もしさも。
軽くのしかかる身の、多少は加減された重みという充実も。
何より、じかに触れ合う格好となる肌や肉置きの感触や、
それが動くおりの躍動が、すべて自分へと
向けられているのが嬉しくて。
直接腕相撲なんて構えれば、もしかせずともこちらが上だろが、
そういう話じゃなくての、あのあの何て言うものか。
納まり返っている自分のとは組成のどこかがそもそも違うのだろう、
欧州人らしい大きな作りのゆったりした骨格やら男臭い肉付きやらが、
抱かれることで
すっぽりとくるみ込んでくれて、
それが何とも心地いい。
まだシャツ越しの、
でもやさしい温みをおびた
イエスの身が重なって、
隈なく覆いかぶさるそれだけで、
まずは凌駕されたような気分となるのが、
どうしてだろうか
ひどく落ち着いてならなくて。
ついのこととて細い吐息をついたのへ、
「あ、あ、ごめんね。」
「……え?」
まだ感じやすいところ、
いきなり触っちゃったかなと、
それで震えた
ブッダだったのかなぁという
勘違いをしたらしい。
そろそろ室内の暗がりには
目も慣れつつあったし、
此処まで間近、
文字通り肌も密着し合うほどの近間にいても。
お顔や表情ばかりを、
そうそう見てばかりもおれずだったので。
組み敷いた肢体が ひくり震えた感触から、
ああ怖がらせたと怯んだ
イエスだったようであり。
「う〜〜。////////」
そうまでおっかなびっくりな対し方へ、
今度はブッダもちょいと引っ掛かったか、
「何でそうも甘やかすのー。/////////」
キミが欲しいという想いは同じなはずで。
もしかせずともイエスの側は、
愛しい愛しいと触れられたのへ、
ブッダが震えて感じ入るの
肌身で拾って確かめることで、
ああと気持ちを高揚させているはずなのに。
恥ずかしい声を出させてゴメンね、
慣れない感覚へ
我慢をさせてばかりでゴメンねと、
こちらを伺ってばかりでいるのへ、
今宵はちょっぴり
物言いをしたくなったようだけど。
「何言ってるの。」
ほどけてしまった深色の豊かな髪に
顔から肩から背中や胸元までもを縁取られ。
日頃のやや賢くもお堅い、
お行儀のいい雰囲気が、
やや甘くなって、
ずんと愛らしく見えてしょうがない
伴侶様なのへ、
うっとりと見惚れてしまったのも一瞬のこと。
どんな不満も埋めてあげたい、
でもネそれだけは聞けませんと。
こちらも口許とがらせて、
メッという窘めのお顔をして見せる。
「ブッダは私の恋人なんだもの、
大事にしなくちゃいけないでしょー?」
「……っ。//////////」
これだけは譲れないのか、
日頃しおしおと叱られるばかりの
頼りなさはそれこそ何処へやら。
のしかかった体勢のまま、
愛しいお人を玻璃の双眸で鋭く見据えると、
「私だけがいい想いをするのでは
何にもならないの。
二人一緒に
気持ちのいいこと共有しなくちゃ、
そんなのちっとも
幸せじゃあないでしょうが。」
言い聞かせるというよりも、
つれない恋人を掻き口説くような切なさで。
何より、
ブッダが日頃からもめろめろとなってしまう、
凛々しいお顔に
わざわざなってまで説かれてしまうと、
「う〜〜〜。///////」
こちらの弱みを真っ向からつつかれて。
でもでも、そんなの狡いと言うにも言えず。
冠を外したおでこ、
こちらの額へこつんとくっつけるほど、
間近まで降りて来たイエスのお顔へ、
渋々ながら、けどでもお顔は真っ赤に染めて、
「………………うん。////////」
こくんと頷いた
釈迦牟尼様だったようでございます。
そもそもからして、
筋骨隆々な
力自慢の屈強なお人ではないけれど。
風貌の素地が
彫も深くて男臭いという仕様の君なので。
こちらが恥じらう様子を、
愛おしいと眸を細めて見つめてくれるのが
それは頼もしく映ってやまぬし。
シャツを脱がせようと
背中を浮かさすおりなどに
ぐいと引き寄せられて密着する
肉付きの雄々しさや、
オレンジの匂いが滲む
まろやかな温みとが、
ああこの人に求められているのだと、
これ以上なく感じられ。
「う…、んぅ、…あ。////////」
悩ましげな表情、甘いわななき、
か細い声に、
こらえても洩れてしまう濡れた吐息。
「あ…、もう…。///////」
とうに脱ぎ去って双方ともにシャツはなく。
少しずり落ちかかった毛布の陰で、
あらわになったイエスの背中へと
回されていたブッダの手が、
時折、くっくっと指を立てるよな、
煽情的な所作を見せるのは、
じわじわと高まった快感や淫悦の熱が、
そろそろ頂点へ至りかかっているからだろう。
とかれたことで
背丈を越す長さとなった豊かな髪が
汗ばんでうっすらと緋をおびた
肌のあちこちへとかかって
しどけなくも妖冶な印象を醸しており。
向かい合っての
抱き合うことで接しているのは
やわらかくて気持ちのいい手触りとそれから、
胸元やまろやかな肩、
独占するよに掻い込んだ脇や
悩ましいやわらかさの下腹のみならず。
内肢へと膝を割り入れたことで
深く密着している腿同士も含め、
官能の波が襲っては
ふるるとわななく隠しようもない媚態が、
イエスの内にも
ほのかに芽生えた淫蕩な何かを、
それ以上はない
蠱惑で甘く突つきでもするものか。
「ん、もうちょっとだけ。」
我慢強いブッダが、
自分から
もう限界とその兆しを伝える声を放っても、
何故だか すぐには応と構えてくれず、
何かが咬み合わぬよな晩がたまにあり。
拒絶というほど強いものではないけれど、
だからこそ
待ってと言われりゃ待とうとなるのが
今の二人の相性のようなもの、なので。
ああと切なげに眉を寄せ、
急く息を切れ切れにつきながらも
耳元や二の腕へと唇で触れられ、
熱くてたまらぬ秘処の間近、
内肢のやわらかいところを
腿で擦り上げられては、
もうもう堪らぬ。
イエスに組み伏せられたままの布団の上で
まるで不器用に泳ぐよに
身じろぎをしては背条を反らし、
ひ・ぐぅ…、と
歯を食いしばることで
無理矢理封をしている口許だが、
喉の奥が
もうもうこらえ切れぬと開きかかっていて、
今にも内からの圧で
こじ開けられそうになっており。
吐息に掠れた悲鳴が滲んでいるのが
自分でも聞こえ、
さしものブッダも、
もうダメかもとの限界を感じてしまう。
“別に、悲鳴を上げたって、
命まで取られる、
訳じゃあない、けど…。”
ついつい二人で馬鹿笑いをしてしまい
松田さんから
近所迷惑だと叱られたことだって
あったじゃないか。
それとはさすがに次元も違い、
何とも恥ずかしいことの
露見ではあるけれど。
ぐぐうと奥歯を食いしばるのも限界間近、
ひぃと吐息に入り交じる、
笛の音のような
高くてか細い声音が止められぬ。
“ ……っ!”
ああもうもうダメだと、
霞む意識を手放しかかったその間際。
力が緩んでしまいかかった口許へ、
柔らかなものが覆いかぶさり、
「…さわるよ?」
離れ切らぬままに動いた唇が、
そんな一言を囁いて。
え?とぼんやり聞き流したそれが、
どういう意味かは、
覆い尽くすよに触れている肌とは別、
下肢の高まりをそろりと撫でた、
そちらも熱い感触が教えてくれて。
“………あ。/////////”
焦らされることで、とば口が曖昧になり、
今しもはち切れそうな悦楽の塊は
自分でもどうしたら弾けるものかに
戸惑う代物と化しており。
限界以上にかっかと腫れた熱塊へ、
それまでのもどかしさが嘘のように
衒いなくするりと触れてくれる手があって。
あ、ああ……っ。//////////
そこから伝わったのは、
広い触覚の中から振り絞られた、
一際冴えた印象。
熱い砂漠へぽつりと落ちた、
小さな粒のようなそれ。
充血し切り、
熟れすぎて腫れたようになってしまった
感覚の中を
するすると静かにすべり込み。
最も深みへと、
最も甘いところへと目指して落ちてゆく
小さな小さな蜜のしずくのようなもの。
至ったところを容赦なくほとびさせ、
おいでと高みへの放出を誘う、
的確な呼び水のようでもあるそれへ。
そうなれば間違いなく、
激しくも目茶苦茶に翻弄されると
判っていながら、
怖さと同じくらい
早く早くと求める声も騒ぐ胸のうちであり。
……あ
やっと与えられた切っ掛けに、
それを追ってた意識ごと目が眩み。
絶頂を迎えた身の内から込み上げて、
そのまま勢いよく
ほとびた甘くて激しい熱の奔流が、
弾けた威勢を保ったままに
総身を駆け巡っているのがありありと判る。
血脈の響きか、
すぐ耳元で刻まれる鼓動の激しさに、
堪えているはずの呼吸や声も
漏れているよな不安がふと沸き立って。
それがますますと、
ブッダの持ち前の
高潔で貞淑なところを
意識のどこかでさいなんでおり。
そのくせ、
身のうちで暴れる嵐には耐え切れぬまま、
時折びくびくと
淫蕩に撥ねる身を止められずにいて。
“あ…、あああ…っ。////////”
これだけはと必死で、
いつものように
両手がかりで口許を封じていたブッダだが。
顔を半分覆った格好となった
その不自由さの中、
“ いえす。////////”
最初から変わらぬままに
この身を抱いてくれているイエスが、
その尋を生かしてぐるりと回したその腕で
しっかと自分を
押さえ込んでくれているのへと意識が及ぶ。
押さえ込まれていることが、
自分でぎゅむと制圧したい衝動を、
ブッダ本人に代わって
受けとめてくれていて。
誰がこうまで追い詰めたのかも
どうでもいい、
このままいつまでも抱いていてと、
頼もしい腕の中、
意識だけでも陶然として浸っておれば。
「…、……っ。」
そうこうするうち、
長い長い永劫のように思えた激しき嵐も、
その盛りを越えそうな気配。
《 あ、あ…あぁ…。》
頭の中が真っ白になって
高みから放り出されたような感覚に襲われる。
怒涛のようだった快楽の奔流が、
やっとのこと限となったようであり。
とはいえ、熱を帯びた息遣いが止められず、
胸では
痛いほどのキツさで拍動が刻まれていて、
あまりの強さから
呼吸まで苦しくてしょうがない。
せぐりあげるような辛い息を
口ではあはあと繰り返し、
すっかり萎えて力の入らぬ身が、
やはり内側から滲む
熱と汗とに炙られているのを、
くったりしつつ体感しておれば。
“…………あ。/////////”
そちらも熱を帯びた手のひらが
目元にかぶさって。
額へ向けてごそりと撫で上げることで、
顔にかぶさっていた髪を
掻き上げてくれて。
「…もうもう、
意地っ張り屋さんなんだから。」
取り乱すのを頑として堪え切ったことへだろ、
偉いねぇと言うでなし、
水臭いなぁと言うでなしの、
そんな彼らしい言いようをしてくれて。
ころんと傍らの空隙へ自分の身を転がすと、
ブッダの肢体をあらためて
懐ろへと迎え入れるよに抱き締めてくれた、
そんなやさしい伴侶様だったのでありました。
◇◇◇
追い上げられたブッダが、
身をよじってまで早くと懇願しても
ちょっとだけ焦らす意地悪を
するよになったイエスなのは。
もしかしたなら ブッダが至ったそのまま
疲れに呑まれて
寝オチしてくれないかななんて
思うからかも知れぬ。
“勿論、
そうは いかせないんだけど…。///////////”
声を押し殺すこらえもあってのこと、
激しい悦の波が荒れ狂うのへ
全身が晒されるひとときは、
受け止めるだけで精一杯となり。
それが去った途端、
敢え無くくったり伸びてしまいもするが、
何とか呼吸を整えてから。
『…じゃあ、おやす』
みとまで言わさずの形勢逆転も、
ブッダにしてみりゃ いつもの流れ。
イエスの側もまた、
あのそのどうあっても恥ずかしいと
言い張ったので、
お顔は見ないようにと心掛け。
こちらからよいしょと、
彼の胸板へ胸元だけを乗り上げて顔を伏せ、
そうすれば
顔を見合わせはしないでしょ?という
暗黙の了解の中。
自分がされたのの最後の一つだけ、
そろりと秘処へと手を伸ばし、
十分に張り詰めたところをそおと撫でれば。
『…っ。』
彼もまた慣れてなんかいない身なだけに。
それでなくとも、愛おしい人と堅く抱き合い、
その可憐な恥じらいや苦悶の声を
余す事なく肌身で感じ取ってた、
甘い甘い愛咬の一時を過ごした直後とあって。
うっと小さく呻いてのそれから、
思わぬ寒さを自覚したよに
ふるるっと肩や背中を震わせる。
そのまま強ばっていた総身が萎えていって。
ややあって、
「………もおー、
見ないでよぉ。////////」
こそりと口火を開くの、
いつもイエスのほうからというのは
もしかして。
双方で照れていては始まらぬから、
お道化て場を和ませてしまうことで、
上手に
空気を入れ替えてくれているのかなぁ。
とはいえ、
「見てなかったってば。」
ここで“かわいい”なんて言ったらば、
しばらくは拗ねてしまって、
口も利いてくれなくなるかも知れぬ。
“本当に 何て優しいんだろうね、
キミってば。”
自分が昇り詰めてゆくときに、
こちらの背中へ腕を回して、
再び抱きしめてくれるのだけれど。
その折、必ず
手をぎゅうと握り込めているでしょう?
こちらの肌へ爪を立ててしまわぬか、
指を立てるのさえ
痛くしないかと恐れてのこと、
間違いなく無意識だろに、
それを忘れないでいられる優しいところが、
嬉しいやら、でもでも微妙に歯痒いやら。
“それって、
我を忘れてまでは
いないってことかなぁ。”
気を許していないというのはあり得ない。
ただ、どんなに苦しかろうと
ブッダのためなら
我慢もしちゃうよという
イエスなのが察せられ。
“それって…。”
単純に イエスもまた
強くなりつつあるのだと
受け入れればいいものか、
それとも…ブッダにまで自己犠牲を発揮して、
何でもかんでも自分は二の次なんて、
構えるようになってはいないのだろか。
「ブッダ?」
余韻に浸っているものとでも思うたか、
黙ってしまったこちらに合わせ、
彼も口をつぐんだそのまま
丁寧に髪を撫でてくれていたけれど。
「え? なに?」
何か怪訝に思われたかなと、
顔を上げまでしてお返事をすれば、
「風邪ひくよ?」
汗が引く前にほら着て着てと、
毛布の中で丸まっている
互いのシャツやらスェットパンツやら、
手探りで探し当てては
あらわにした肌へと着せあいっこになって。
さっきまでの
甘くて艶っぽい雰囲気もどこへやら、
甘さはそのままだが、
もうすっかりと健やかな声音へ戻った二人、
「じゃあ、おやすみね。」
「うん。おやすみなさいvv」
すぐにも身を寄せあっての
くっついたままではあったれど、
冷やさぬようにと寝間着を着込み合い、
何とも健全におやすみを言い合うところが、
ある意味、まだまだ初々しい。
窓の外には、冬の夜空に冴えた半月。
勿論ナイショと
澄ましてござったそうですよ。
〜Fine〜 14.12.30,〜12.31.
*ようもここまでと、
公私でいろんなことが立て続いた師走でして。
それでも何とか一年が終わろうとしております。
皆様には可愛がっていただき、本当にありがとうございました。
集中できない日々には書き辛い、そんなそんな甘いけど変梃子なお話、
まだちょっと続けて行きたいと思っておりますので、
よろしかったらお付き合いくださいましね。
どうかよいお年をお迎えくださいますように。
めーるふぉーむvv


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